アコム貸付停止措置と過払い金の時効に関する裁判例

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アコムの過払金の判決

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大阪地方裁判所令和5年7月26日判決

 

アコム過払い金と貸付停止

アコムに対する過払い金請求では、争われるポイントが多いです。

数年前よりも込み入った主張がされるようになり、単純に利息制限法の計算をした金額が返還されることは少なくなっています。

取引の完済ごとに分断された取引の扱い、貸付停止措置の影響、そして和解契約の存在など、複数の論点が生じてきます。

ここでは借主側に有利な判決を紹介しておきます。

 

著者 弁護士石井琢磨

 弁護士石井琢磨
 更新:2024.4.16

 

アコム取引の分断

まず、アコムとの間で複数の取引があった場合、アコムはこれらの取引を個別のものとみなし、10年以上前に完済した取引に関しては時効を主張して過払い金額の減額を図ることがあります。

この争点は「分断」と呼ばれ、裁判所によっては、分断を許容する期間を1年とみなす傾向にあります。

つまり、1年以上の空白期間があると、それ以前の取引で10年が過ぎていると消滅時効との主張です。

が、この点は裁判官の裁量によって異なり得ます。

取引が実質的に連続していたことを証明するためには、カードの返却や解約手続きが行われなかった事実を指摘する必要があります。

 

アコム取引と貸付停止

次に、最近では、貸付停止措置が取られた場合、アコムはこの措置を過払い金請求の時効の起算点だと主張してくることが増えました。この点については、まだ最高裁での明確な判断が下されておらず、裁判所によって見解が分かれています。

長期間の返済を続けている人の中には、途中から借り入れをせずに返済だけを続けている人も多いでしょう。

このような場合に、借り入れがなくなった経緯で、審査や何らかの協議がされている場合、それを貸付停止措置だとして、そこから消滅時効の主張をしてくることが増えました。

この争点には注意が必要です。

 

アコム和解と過払い金の消滅時効

また、過去に和解契約を結んでいる場合、アコムはその和解契約を根拠に過払い金請求に対して大幅な減額を主張することがあります。ただし、和解契約が無効と判断される可能性もあり、これは取引履歴の開示の有無や和解書の内容など、複数の要因によって左右されます。

 

分断否定の裁判例

基本契約の切り替えによる分断の否定、

貸付停止措置による消滅時効期間進行の否定

をした裁判例です。

大阪地方裁判所令和5年7月26日判決です。

アコムは、2008年頃から利息制限法利率に変更する新基本契約を締結していることが多いです。

ただし、借換えはせずに、以前の基本契約の残元金を新基本契約に引き継がせるという対応を行っていることが多いです。本件でも、そのような流れで進められており、基本契約が別だとして、取引の分断が主張されています。

 

消費者法ニュースでは、この貸付停止措置について、アコムが2010年6月14日に会員規約を改正、停止事由が解消すると同措置が解除され得ることを明記しているので、それを主張すべきとの指摘もされています。

 

裁判所の判断

アコムに対し、過払い金615万2711円と過払い利息の支払を命じています。

まず、取引の分断は否定しています。

第1取引の基本契約が平成21年2月5日付けで解約となり、同日付けで第2取引の基本契約の申し込みがされており、いずれの基本契約も借入極度額は50万円であること、

第1取引について約定の残債務は完済されていないこと、

第1取引における最終の弁済(同月5日)から第2取引における最初の借入れ(同月9日)までの期間は4日にすぎないことからすれば、

第2取引の基本契約の約定貸付利率が、第1取引におけるそれとは異なり、利息制限法所定の制限利率内(年18%)であることを考慮しても、第1取引と第2取引とは事実上1個の連続した貸付取引と評価することができ、第1取引により発生した過払金を第2取引により生じた借入金債務に充当する旨の合意があると解するのが相当としました。

 

第1取引により生じた過払金返還請求権について、平成21年2月5日から消滅時効が進行するとはいえないとしています。

 

貸付停止も否定

分断の次に、貸付停止措置の争点についても判断しています。

アコムは、平成23年5月17日にアコムが本件貸付停止措置を執ったことにより、過払金充当合意は失効ないし解消し、過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借契約取引は終了したとして、同日までに発生した過払金返還請求権については、同日から消滅時効が進行し、その後に発生した過払金については、個々の返済時から個々の過払金返還請求権の消滅時効が進行すると主張。

 

しかし、過払金充当合意を含む基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、同取引により発生した過払金返還請求権の消滅時効は、過払金返還請求権の行使について上記内容と異なる合意が存在するなど特段の事情がない限り、同取引が終了した時点から進行するものと解するのが相当というのが最高裁の考え方です。

 

本件の基本契約には過払金充当合意が含まれるところ、

①アコムの貸付停止措置は、被告が債権保全上の判断に基づいて一方的に行うものであって、個別に債務者の同意や承認を要するものではないこと(AC会員規約第22条3項)、

②本件貸付停止措置に当たって、原告とアコムとの間で、過払金が発生している場合には原告においてその返還請求権を行使し、今後発生する過払金についてはその都度その返還を請求する旨が黙示にでも合意されたとは認められない(認めるに足りる証拠はない)ことからすると、

上記特段の事情があるとはいえず、原告のアコムに対する本件の過払金返還請求権の消滅時効は、取引が終了した平成28年3月14日から進行するというべきであるとしました。

 

アコムのATM主張の排斥

この点、アコムは、本件貸付停止措置により、アコムのATM画面に「〈ご融資〉利用可能額○○円」のボタン及び「く極度額等の変更申込〉」のボタンがいずれも表示されなくなることや、返済の際に交付されるATM明細書の「利用可能額」の欄に金額が表示されず、「*」が表示されることを指摘するが、そのことから直ちに、アコムが、それまで継続してきた事実上1個の連続した貸付取引が終了したと認識したとはいえないとしました。

 

なお、基本契約に基づき又は事実上1個の連続した取引として、借入れと返済が繰り返される場合においては、個々の弁済により過払金が発生する都度その返還を請求することが当事者間で想定されないのが通常であることから、明示的に合意されていなくとも、当事者の合理的意思解釈として、過払金充当合意があると認められるものと解されるところ、本件貸付停止措置によって、原告はもちろん被告においても、既に発生している過払金の返還請求を想定していたとは解されない(被告が、本件貸付停止措置を行うに当たって、原告からの過払金返還請求を想定した対応を執っていたことはうかがわれない。)としています。

貸付停止措置が執られたことを理由とする消滅時効の主張も否定しています。

 

過払金額の計算方法

各貸付けにおける制限超過部分は元本に充当され、元本が計算上完済となった後に原告からアコムに支払われた金額は、過払金として被告の不当利得となる。

そして、過払金充当合意により、発生した過払金はその後に発生した借入金債務に充当される。

アコムは悪意の受益者として利息支払義務を負うところ、発生した過払金に対する利息についても、その後に発生した借入金債務に充当されると解するのが相当としました。

 

悪意の受益者

過払い利息の争点もありました。

貸金業者が利息制限法1条所定の利息の制限を超える利息を受領したが、その受領につき貸金業法43条1項(平成18年法律第115号による改正前のもの)の適用が認められない場合には、当該貸金業者は、同項の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り、民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるというのが最高裁の考え方。

本件で、上記特段の事情があるとは認められないから、被告は、悪意の受益者として利息支払義務を負うと結論付けて言います。

 

 

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